今回は, まず連立一次方程式の解について説明し, それから解の自由度について解説します!!
rankの計算ができることを前提に話が進むので, 復習したい方は以下の記事を読んでみましょう.
連立一次方程式の解の分類
連立方程式の解
分類の前に連立一次方程式の解の自由度について考えます.
まず, 連立一次方程式の解を定義します.
上記は, 中学・高校で学習した一次方程式の一般的な形となっています.
行列を用いてこの方程式を表すと,
\( A = (a_{ij})_{1\leq i \leq m, 1 \leq j \leq n}\)を係数行列, \( \mathbf{x} = \!{}^t (x_1 \cdots x_n) \), \( \mathbf{b} = \!{}^t (b_1 \cdots b_m) \)
とおくことで, \( A\mathbf{x} = \mathbf{b} \) と表されます.
連立一次方程式の解の存在性について, 次のような定理があります.
連立一次方程式の解の分類
前回学習したrankを上のように応用することで, 連立方程式が解を持つか判定できます!
この定理は便利なので, 使いこなせるようにしましょう!
また, 連立一次方程式には「解の自由度」という概念があります.
核第係数行列については以下の記事を参考にしてください!
解の自由度
連立一次方程式の解の自由度
「任意定数」というのは, 簡単に言えば「好き勝手決めていい定数」のことです!
高校の頃に学習した「積分定数」も任意定数の一つです.
また, 先ほどのrankに関する定理から,
解の自由度 = n – rank\( A \)
が成り立ちます.
解の自由度は, 方程式を実際に解いてみると理解が深まります.
自由度のある連立方程式を解くのはもう少し後で解説するので「こんなものがあるんだ」程度に思っておいてください.
以上の内容について, 具体的に問題を解いてみましょう!
問:連立一次方程式の解の分類
[解答]
(1) 拡大係数行列 \( (A | \mathbf{b} )\)は
\( (A | \mathbf{b} ) = \left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 1 & 2 & 1 \\
1 & -2 & 3 & 2 \\
2 & 2 & 4 & -1
\end{array} \right) \)
となります. このとき, \( (A | \mathbf{b} ) \) を階段化すると
\( (A|\mathbf{b}) \to \left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 1 & 2 & 1 \\
0 & -3 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0 & -3
\end{array} \right)
\)
となるので, \( \mathrm{rank} A = 2 < 3 = \mathrm{rank} (A | \mathbf{b}) \)
がわかります. よって, 連立方程式は解を持ちません.
(2) 拡大係数行列 \( (A | \mathbf{b} )\)は
\( (A | \mathbf{b} ) = \left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 2 & 3 & 5 \\
1 & 1 & 1 & 2 \\
1 & 2 & 1 &1
\end{array} \right) \)
となります. このとき, \( (A | \mathbf{b} ) \) を階段化すると
\( (A|\mathbf{b}) \to \left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 2 & 3 & 5 \\
0 & 1 & 2 & 3 \\
0 & 0 & 2 & 4
\end{array} \right) \)
となるので, \( \mathrm{rank} A = \mathrm{rank} (A | \mathbf{b}) = 3 \) がわかります.
よって, 連立方程式は解を持ちます.
さらに, 階段化に引き続き拡大係数行列を簡約化していくと
\( \left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 2 & 3 & 5 \\
0 & 1 & 2 & 3 \\
0 & 0 & 2 & 4
\end{array} \right) \to
\left( \begin{array}{ccc|c}
1 & 0 & 0 & 1 \\
0 & 1 & 0 & -1 \\
0 & 0 & 1 & 2
\end{array} \right) \)
となるので, 連立方程式の解は
\( \left( \begin{array}{} x_1 \\ x_2 \\ x_3 \end{array} \right) =
\left( \begin{array}{} 1 \\ -1 \\ 2 \end{array} \right) \)
となります.
以上が「解の分類と自由度」という話です.
rankの使い方の一つがわかったのではないでしょうか?
次回は「行列の簡約化」を解説します.
あと少しで方程式を解く準備が整うので, これまでの内容をきちんと理解しておきましょう!
それでは, 今回のまとめに入りましょう‼︎
「解の分類と自由度」のまとめ
次回は「行列の簡約化」
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