「基底と次元」では,ベクトル空間を構成するベクトルである基底と
その基底を用いてベクトル空間の次元を定義していこうと思います.
「基底と次元」目標
・基底とは何か理解すること.
・次元を計算できるようになること.
基底
冒頭にもベクトル空間を構成するベクトルと書きましたが,
どんなものか早速定義しておきましょう.
基底
基底
ベクトル空間\(V\) のベクトル\( \mathrm{a_1,a_2, \cdots ,a_n} \)が次の2つの条件を満たすとき,ベクトル\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)を\( {V} \)の基底という.
(1)\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)は一次独立である.
(2)\( V \)の任意のベクトルは\( \mathrm{a_1,a_2,\cdots,a_n} \)の一次結合でかける.
この定義から
\( \mathrm{a_1,a_2,\cdots,a_n} \)の一次結合全体の集合\( <\mathrm{a_1,a_2,\cdots,a_n}> \)
は\(V\)の部分空間でしたから,
ベクトル空間\(V\)は\( <\mathrm{a_1,a_2,\cdots,a_n}> \)を用いて,
\( V = <\mathbf{a_1,a_2,\cdots,a_n}> \)が成り立つことがわかります.
すなわち,基底となるベクトルを用いれば
ベクトル空間の任意のベクトルは基底を用いて表現できるということですね
例:標準的基底
例:標準的基底
\(\mathbb{R}^n \)のn個の基本ベクトル
\( \mathbf{e_1,e_2},\cdots,\mathbf{e_n} \)を
\( \mathbb{R}^n \)の標準的基底という.
標準的基底を言い換えると数ベクトル空間の基本ベクトルのことです.
基本ベクトルであれば
一次独立であるという条件も
任意のベクトルを一次結合で書けるという条件も満たしますので,
基本ベクトルは数ベクトル空間の基底といえるでしょう.
また意外と標準的基底ってなんだっけ?となりがちなのでしっかり覚えておきましょう.
それでは,実際に数ベクトル空間の基底に関する問題を解いていくことにしましょう.
問:基底
問:基底
次の3つのベクトルは\( \mathbb{R}^3 \)の基底になることを示せ.
\( \mathrm{a_1} = \begin{pmatrix} 1
\\2
\\0 \end{pmatrix},\mathrm{a_2} = \begin{pmatrix} 2
\\5
\\-1 \end{pmatrix},\mathrm{a_3} = \begin{pmatrix} -1
\\-2
\\1 \end{pmatrix} \)
基底になることを示せということは
基底の定義で与えた2つの条件を満たすことを確かめればよいわけです.
では,確かめていきましょう.
では,基底に関して重要な定理を一つ与えます.
定理:基底を構成するベクトルの本数
定理:基底を構成するベクトルの本数
ベクトル空間\( V \)の基底を構成するベクトルの数は,
基底によらず一定である.
この定理によりベクトル空間の基底は一般に1つではなくたくさん存在しますが,
基底の本数に関しては一定であるということを保証しています.
このことは以下で行おう次元で大切なことですのでおさえておきましょう.
それではここからは次元に入ります
次元
次元
次元
ベクトル空間\( V \)の基底を構成するベクトルの本数のことを
\( V \)の次元といい\( \dim{V} \)とかく.
「定理:基底を構成するベクトルの本数」により基底を構成するベクトルの本数は一定という
ことが与えられています.
この本数のことを次元といいます.
一番単純な例として数ベクトル空間の次元を考えることにしましょう.
例:数ベクトル空間の次元
例:数ベクトル空間の次元
数ベクトル空間\( \mathbb{R^2 , R^3 , R^n} \)の次元は
\( \mathrm{dim} \mathbb{R}^2 = 2,\mathrm{dim}\mathbb{R}^3 = 3,\mathrm{dim}\mathbb{R}^n = n\)
となる.
「例:標準的基底」から
数ベクトル空間の基底は標準的基底で与えられるのでした.
なので標準的基底である基本ベクトルの本数がそのまま次元になります.
では,数ベクトル空間とは異なりぱっと見で基底の本数がわからないベクトル空間の次元は
どのようにして求めるのでしょうか?
定理:数ベクトル空間の基底
定理:数ベクトル空間の基底
数ベクトル空間\(\mathbb{R}^n\)に対して次の条件はすべて同値である.
(1)\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)は\(\mathbb{R}^n\)の基底である.
(2)\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)は一次独立である.
(3)\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)は\(\mathbb{R}^n\)を生成する.
すなわち,\( \mathbb{R}^n = <\mathbf{a_1,a_2,\cdots,a_n}> \)
この定理は数ベクトル空間の基底を求めたかったら一次独立かどうか,もしくは一次結合で書けるかどうかがわかれば十分だということです.
なぜこれでいいのかは「定理証明集(準備中)」で与えることにします.
この定理を用いて実際にぱっと見で次元がわからない
数ベクトル空間の部分空間について次元を求めることにしましょう!
例題:部分空間の次元
例題:部分空間の次元
\( \mathbb{R}^3\)の部分空間
\( W = \left\{ \begin{pmatrix} x_1
\\x_2
\\x_3 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^3 \mid x_1 + x_2 – 2x_3 = 0 \right\} \)
の一組の基底および\(\mathrm{dim}W\)を求めよ.
「定理:数ベクトル空間の基底」より
今回は2本のベクトルが一時独立だとわかりましたので基底の本数は2本とわかりました.すなわち
次元は2となります.
この例題を参考にして問を解いてみてください!
問:部分空間の次元
問:部分空間の次元
\( \mathbb{R}^4\)の部分空間
\( W = \left\{ \begin{pmatrix} x_1
\\x_2
\\x_3
\\x_4 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^4 \mid x_1 = 2x_2, x_3 = 3x_4 \right\} \)
の一組の基底および\(\mathrm{dim}W\)を求めよ.
以上が基底と次元という話でした.
基底と次元はテストでも頻出で今後線形写像などでも出てくるとても大切な単元ですのでしっかりとマスターしておきましょう!
それでは,今回のまとめに入ります!
「基底と次元」まとめ
「基底」まとめ
・基底とは,ベクトル空間\(V\) のベクトル\( \mathrm{a_1,a_2, \cdots ,a_n} \)が
(1)\( \mathbf{a_1,a_2, \cdots a_n} \)は一次独立である.
(2)\( V \)の任意のベクトルは\( \mathrm{a_1,a_2,\cdots,a_n} \)の一次結合でかける.
ことをいう.
・次元とは,基底を構成するベクトルの本数のことである