【入門線形代数】行列の相等と演算-行列-

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「行列の 相等と演算」では,行列は数を並べたものでしたが,その行列同士が等しいことや
行列を演算させて和やスカラー倍を考えるとどうなるのかこの2つを解説していこうと思います!!

「行列の相等と演算」の目標

・行列が等しいとはどんなときか理解する.
・行列の足し算とスカラー倍はどのようになるのか理解する.
・実際に和とスカラー倍を計算できるようになる.

行列の 相等

行列の相等

行列の相等

行列A,Bが等しいとは、
行列A,Bが互いに(m,n)行列であり、対応する成分が全て等しいことを言い、A=Bで表す.
また、等しくないときはA \(\neq \)Bと表す.

行列の相等について考察します.
二つの行列\( A,B \)を用いて行列の相等について考察します.

とおきます.

この行列 \( A,B \)が等しいということは,2つの行列の(i,j)成分について
\( a_{ij} = b_{ij} (i = 1,2, \cdots ,m\quad j = 1,2, \cdots ,n) \)
が成り立つということです.

文章だと読みづらいかもしれないですが実際に書き下してみると、
全成分等しいのだから行列同士が等しくなるということです.
逆に全部の成分が同じなのに違う行列といわれてしまっても困ってしまいますね.

では,次に和とスカラー倍についても定義します.

行列の「和」と「スカラー倍」

行列の「和」と「スカラー倍」

二つの(m,n)型行列\( A = (a_{ij}),B = (b_{ij}) \)に対して
行列の「和と差」:\( A + B = (a_{ij} + b_{ij}) \)
行列の「スカラー倍」:\( cA = (ca_{ij}) \)(cは実数または複素数)
と定義する.

スカラー倍に関しては実数または複素数を考えていますが,もし複素数がよくわからなければとりあえず実数倍されたものだと考えるても良いです.

こちらも記号だけでは具体的に書き出してみていきましょう
二つの行列\(A,B\)

について

・行列の「和」

このように和とは\(A,B\)のおなじ(i,j)成分同士を足すことです
ここには和の場合のみ書きましたが
差の場合(引き算の場合)でも+を-に変えれば同じことが言えます.

・行列の「スカラー倍」
行列のスカラー倍とは,行列の各成分をスカラー倍することを指します.
こちらも\( c \)(実数または複素数)と行列\( A \)を用いて具体的に記述してみましょう

スカラー倍するとき全体の成分もそれぞれスカラー倍されることがこの具体例からわかるかとおもいます.
ここで,1つ注意です!!
行列のスカラー倍を全ての成分がスカラー倍されるとしっかりと覚えておかないと
後々「行列式」というものを扱った際に「行列式のスカラー倍」と混乱してしまいますので
全成分がスカラー倍されることをしっかりと覚えておきましょう.

では,ここからは実際に和とスカラー倍を計算できるようになるために定理として
和とスカラー倍に関して成り立つ性質を紹介しようと思います!!
ただ,その前に定理に必要な零行列という行列があるので先に定義します.

零行列

零行列

全ての成分が0である行列の事を零行列といい,\(O\)で表す.

全ての成分が零というそのままの名前の付いた行列です.
これは実数でいうところの” 0 ”にあたる行列だと思ってもらって構いません.
零行列に関しては具体例を挙げておきます.

例:零行列

例:零行列

以下の行列は零行列である.
\( \begin{pmatrix} 0 \quad 0 \quad 0\\0 \quad 0 \quad 0\\0 \quad 0 \quad 0\end{pmatrix} \),\(\begin{pmatrix} 0 \quad 0 \quad 0\\0 \quad 0 \quad 0\end{pmatrix}\)

もちろんここに挙げたもの以外にも(m,n)型行列のサイズを変えて全て成分を零にしたものは全て零となります.

では、零行列についても定義しましたのでいよいよどのような性質があるのか見ていきます.

定理:行列の和とスカラー倍の性質

定理:行列の和とスカラー倍の性質

\(A,B,C\)を(m,n)型行列、\(c,d\)を実数または複素数とするとき次の8つが成り立つ
Ⅰ)和についての演算
(1) \( A + B = B + A \)
(2) \((A + B) + C = A + (B + C) \)
(3) \(A + O = O + A = A \)
(4) \( A – A = O \)

Ⅱ)スカラー倍についての演算
(5)\( c(A + B) = cA + cB \)
(6) \( (c + d)A = cA + dA \)
(7) \( (cd)A = c(dA) \)
(8) \( 1A = A \)

定理の証明は
(1)~(4)が「【入門線形代数】「行列」定理証明集①
(5)~(8)が「【入門線形代数】「行列」定理証明集②

実は行列の部分を実数に置き換えて考えると
ほとんど中学生の時からやってきた計算と変わらないことがわかるのではないでしょうか?
それではまとめに入ります!!

「行列の相等と演算」のまとめ

「行列の相等と演算」のまとめ

・行列が等しいということはどんなときか.
行列の相等とは対応する成分が全て等しいこと

・行列の足し算とスカラー倍はどのようになるか.
行列の和とは,(i,j)成分同士を足すこと
行列のスカラー倍とは,行列の各成分をスカラー倍すること

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