「行列式の性質」では,一般の行列式に対して成り立つ性質を見ていくことにします!
行列式を求める方法として別記事でサラスの公式や余因子展開を用いる方法などを紹介しましたが,
今回の性質と組み合わせれば簡単に行列式を求める際に非常に強力な武器になります.
それでは今回の内容に入りましょう!
行列式の性質
定理:行列式の性質
さて,では早速行列式の基本性質を5つ定理として紹介しましょう!
この定理に関して注意点を挙げます.
よく勘違いされる方がいるのですが,この性質は行列に対する性質とは異なります.
詳しくは「行列の相等と演算」でやった
”定理:行列の和とスカラー倍の性質”と見比べてみるとよいです.
特にスカラー倍と和に関してごちゃごちゃになってしまう人をよく見るので
この”定理:行列式の性質”を使う際はくれぐれもご注意ください!
それでは,行列式の性質を使って問題を解いていくことにしましょう!
例題:行列式の性質
この例題に関しては、\( \overset{(1)}{=} \)と書いたら定理の(1)を使ったと思ってください.
ほかの定理の番号も同様です.
それでは、解答に入ります.
<例題の解答>
(1)\( \left| \begin{array}{cccc}3 & 2& 1 & 1
\\1 & 4 & 2 & 1
\\2 & 0 & 1 & 1
\\1 & 3 & 3 & 1 \end{array}\right|
\overset{(3)}{=} -\left| \begin{array}{cccc}1 & 4 & 2 & 1
\\3 & 2& 1 & 1
\\2 & 0 & 1 & 1
\\1 & 3 & 3 & 1 \end{array}\right| \)
\( \overset{(5)}{=} -\left| \begin{array}{cccc}1 & 4 & 2 & 1
\\0 & -10& -5 & -2
\\0 & -8 & -3 & -1
\\0 & -1 & 1 & 0 \end{array}\right| \)
\( \overset{(2)}{=}\left| \begin{array}{cccc}1 & 4 & 2 & 1
\\0 & -10& -5 & -2
\\0 & -8 & -3 & -1
\\0 & 1 & -1 & 0 \end{array}\right| \)
この行列式を1列目に関して余因子展開する
\( = 1(-1)^{1 + 1}\left| \begin{array}{ccc}-10& -5 & -2
\\-8 & -3 & -1
\\1 & -1 & 0 \end{array}\right| + 0(-1)^{1 + 2}\left| \begin{array}{ccc} 4 & 2 & 1
\\-8 & -3 & -1
\\1 & -1 & 0 \end{array}\right| \)
\(+ 0(-1)^{1 + 3}\left| \begin{array}{cccc}4 & 2 & 1
\\-10& -5 & -2
\\1 & -1 & 0 \end{array}\right| + 0(-1)^{1 + 4}\left| \begin{array}{cccc}4 & 2 & 1 \\-10& -5 & -2
\\-8 & -3 & -1\end{array}\right| \)
\( =\left| \begin{array}{ccc}-10& -5 & -2
\\-8 & -3 & -1
\\1 & -1 & 0 \end{array}\right| \overset{(3)}{=}-\left| \begin{array}{ccc}1& -1 & 0
\\-8 & -3 & -1
\\-10 & -5 & -2\end{array}\right|
\overset{(5)}{=}-\left| \begin{array}{ccc}1& -1 & 0
\\0 & -11 & -1
\\0 & -15 & -2\end{array}\right| = -7 \)■
この例題のポイントは,余因子展開を行う前に,行列式の性質を用いて
展開後が楽になるようにしていることです!
このように最初からいきなり余因子展開を行うのではなく整理して計算しやすくすることで
余因子展開後の見通しがかなり良くなります!
(最終行はサラスの公式もしくは余因子展開を用いてご自身で計算してみてください.)
それでは,問をつけておきますので是非といてみてください!
問:行列式の性質
<問の解答>
\( \left| \begin{array}{ccccc}-1 & 2& 1 & 5 & 6
\\2 & 1 & -1 & 1 & 3
\\4 & 9 & 12 & -1 &6
\\2 & 13 & -3 & 2 & 5
\\4 & 2 & -2 & 2 & 6\end{array}\right| \)
\(\overset{(2)}{=} 2\left| \begin{array}{ccccc}-1 & 2& 1 & 5 & 6
\\2 & 1 & -1 & 1 & 3
\\4 & 9 & 12 & -1 &6
\\2 & 13 & -3 & 2 & 5
\\2 & 1 & -1 & 1 & 3\end{array}\right| \overset{(4)}{=} 0 \)■
この問題は少し拍子抜けかもしれません笑
ただ性質を知らないと一度5次正方行列を展開して求めなければいけないので,
やはり定理の威力は実感できるかと思います!
以上が「行列式の性質」という話でした!
冒頭にも言いましたがこの性質をサラスの公式や余因子展開と組み合わせる威力を
感じてもらえたのではないでしょうか?
少し行列の性質と混ざりやすいですがこの性質を抑えておくことで
かなり計算が楽になりますので是非とも全て押さえましょう!
それではまとめに入ります!
「行列式の性質」のまとめ
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